ファ○キュー金木犀

 

金木犀のバカヤロウが香り散らかし始めやがった。

 

夏は死んだ。

 

仕事帰りに微かに香るのを、慢性鼻炎に侵されている僕の鼻が感じ取った。よく「死期が近い人からは独特なにおいがする」という話を聞く。おじいちゃんが死ぬ前にそのようなにおいを感じたことはないが、この香りは間違いなく夏が死ぬときのものだ。何度も嗅いだことがある。

 

ここは戦艦ミズーリの甲板上かもしれない。僕は夏の死を受け入れ、調印し、降伏した。帰宅してすぐ、秋服を引っ張り出した。やけくそ衣替え。

 

 

 

寝る前に落ち着きたい時、僕はいつも金木犀の香りのお香を焚く。死んだ夏を思い出しながら感傷に浸るメンヘラと化した僕は、金木犀の香りを纏いながら寝床へ潜るのであった。