風が吹く日

 

風が強い日だった。

 

朝からなんとなくすべてが上手くいった。

 

駅の人ごみの中での進路選択を一度もミスらなかったし、いつもより1本早い電車に乗れたし、吊り革につかまることができた。

 

会社についても良い流れは続いた。たくさんありがとうと言われたしありがとうと言った。そしてまたありがとうと言われた。

 

先輩からランチに誘われた。辛い物がどうしても食べたくなって、辛い物好きの僕に白羽の矢が立ったらしい。僕が辛い物好きってこと、どこで知ったんだろう。

担々麺屋さんに連れて行ってもらった。けっこう辛かった*1。食べ終わった時の先輩はすごくすっきりした表情をしていたので、ストレス溜まってるんだろうなと思った。ストレスが溜まると辛い物を食べたくなる。そういえば最近別の先輩も辛い物食いてえな~とクソデカボイスで言ってた。みんなストレス溜まってるのかな。

 

500000000000000000年ぶりに定時退社した。風が強かった。

 

道路にデカいゴミ箱が落ちていた。どこからか飛ばされたらしい。車が2台、避けていった。みんな知らんふりをして通り過ぎていく。

 

今日の僕は、すべて上手くいくかもしれない。

 

僕はゴミ箱を拾った。片手で持ち上げると意外と重かったので、スマホをポケットにしまって両手で持ち上げ直した。元々あった場所はわからないので、それっぽい場所へ置いた。風で飛ばされないように、自販機と建物のちょっとした隙間に横倒しにして置いた。

すると目の前のビルからお兄さんが出てきて、元気よく「ごめんなさい、ありがとうございます!」と言った。「いえいえ」としか言えない自分が嫌になる。それでは、と一礼し、イヤホンをつけ直してポケットに手を突っ込んで帰った。帰り道、「場所はここでいいですか?」とか気の利いたひとことが言えればよかったなぁなどとひとり反省会をした。

 

帰り道も風が強かった。

 

良い日だった。

 

youtu.be

 

おやすみなさい

 

*1:僕は辛い物好きだけど辛さをちゃんと感じるタイプの辛い物好き