小学生の頃に両想いだった子と会った話を供養します

3月は別れの月。そんな月の間にこの記事を上げたかったけど間に合わず。仕事が忙しかったから、という言い訳を使わせてもらう。

 

3月某日、10+n年前バイバイした子と再会した話。その子をAとする。

 

Aとの出会い

Aと出会ったのは同じクラスになった小学校5年生の時。他のクラスにいるのは知ってたけど一切絡んだことがなく、現に5年生より前のAとの記憶が一切ない。Aはクラスの女子の中心人物ではなかったが、男勝りで背が高く、整った顔をしていたので男子からの人気はそこそこ高かった*1

Aの家は道路と広場を挟んだ向かいだったので通学路がほぼ同じで、よく一緒に帰っていた。といっても2人きりで帰ったことはほぼ無くて、お互いに仲の良い友人グループがあったのでそのグループみんなで帰ることがほとんどだった。Aに好意を持っていた僕は、小学生特有のクソガキムーブでAにちょっかいを出すなどして気を引こうとしていた。具体的には「ゴリラ!」「クソババア!」などの言葉でからかい、Aは「ゴボウ!」「クソジジイ!」などと返してくる。...書いててめちゃくちゃ恥ずかしくなるなこれ。

 

 

告白

そんなAに告白しようと思い立ったのは、卒業が迫りつつある6年生の秋。今でも鮮明に覚えてる。僕はある日の昼休み、「放課後、教室の後ろの窓際に来て」と書いた紙切れをAに渡した。窓際後方指定、あまりにもクサい...

 

そわそわしていたらあっという間に放課後。Aはニヤニヤしながらやってきた。「なに?」と強い口調で言うA。僕は窓を開けた。風が一気に吹き込む。僕たちはバサバサと舞うベージュのカーテンの中で向かい合っていた。

「好きです」

Aの目を見て言った。

「私も」

Aはニコニコしていた。僕は直視できなかった。あまりにもかわいかったから。
そのあとどうしたかの記憶は残っていない。

 

その日から僕たちは、「C」*2という合言葉を作ってお互いの気持ちを確認し合うようになった。みんなと一緒に帰っている時にAがこっそり手で「C」を作り、それに僕も「C」を作って返す。小学生の僕たちに付き合うという概念は無かったが、繋がっている感があって最高に楽しかったし幸せだった。

 

 

別れ

そんな感じで過ごしていたある日。Aが小学校卒業と同時に引っ越すらしい、という情報を母が井戸端会議で仕入れてきた。ショックだった。同じ学区の中学校に行くと思っていた。転勤族の多い地域で、僕みたいに6年間フルで住んでいる人間はかなりレア。これまで何十人も友達を見送ってきた。友達が引っ越すのはそんなに珍しいことではない。ただ今回は違う。

 

...僕は、Aに引っ越しの話題を一切出さないまま小学校を卒業した。Aも一切話題に出してこなかった。毎日変わらず「C」は続いた。

 

春休みのある日。向かいのN号棟の駐車場に人だかりができているのを僕はベランダから見ていた。Aがお辞儀をしながら車のほうへ向かっていく。車に乗り込む直前、Aは僕の方を見て手を振った。気づいてたのかよ。大声でバイバイを言おうかと思ったが、言えなかった。その代わり、Aを乗せた車が見えなくなるまで手を振った。クソガキながら感傷中毒患者だった僕は自分の部屋へ戻り、ピンクのバランスボールに顔を押し付けて『車輪の唄』を聴きながら泣いた。

youtu.be

 

なんとなく、離れ離れになったら終わりだと思っていたのだろう。中学・高校時代、Aとは一度も連絡をとらなかった。Aの友達の女の子から「元気そうだよ」と伝え聞くくらいで、次第にその伝書鳩もなくなり、僕は別の恋をした。おそらく向こうも。

 

 

再会

Aと再会したのは、大学時代に地元で行われた小さな同窓会だった。Aが来るという噂を聞いた僕の心は少しざわついた。小学校卒業から10年近く経ってるし、さすがに僕だって「C」からは離れて色々恋愛を経験している。

 

現れたAはとてもきれいだった。僕の目にバイアスがかかりすぎている可能性があるが、この際それはどうでもいい。長い黒髪ロング。全く僕のタイプではない。が、きれいだった。

 

何を話したかは全く覚えていない。が、きれいだったことは覚えている。LINEを交換して、ごちゃごちゃと大人数で歩いているうちに気づいたらそれぞれ帰っていた。

 

 

3月

2月。遠方に住むAから突然LINEがきた。3月某日、旅行で東京へ行くから帰りの新幹線の時間までランチでも行かない?と。何年ぶりだよ。突然の誘いに僕は狼狽えた。しかし断る理由はない。幸い(?)半年前からフリーなので女性と二人きりで会うのに後ろめたいことなどない。

 

その日はあっという間にやってきた。約束の店の前へ早く着きすぎたので周辺をうろついて時間をつぶした。いつもならこういう時は音楽を聴いてじっと店の前で待ってるのに。20分くらいうろついて、時間の5分前に店の前へ戻った。遅れること数分、Aが現れた。

 

Aはとてもきれいだった。そして笑顔だった。告白したあの日のように。

「ごめん、待った?」

「いや、ちょうど来たところ!」*3

使い古された台本みたいなやりとりをして、僕たちはあまりにもクサすぎる再会を果たした。

 

キャリーバッグ持つよ、と言う前に手汗を確認。よし、大丈夫。人に良く見られたいと思うのは人の性だ。しかし、これは本当にそれで片づけられるものなのだろうか???...僕は明らかにAを意識していた。

 

店へ入り、席に着いた。それからの4時間はあっという間だった。昼間からお酒飲んじゃおう、と言って2人でバカみたいに飲んだ。飲み屋じゃないのに。そしてバカみたいに話が弾んだ*4。数少ない小学生の頃の記憶を共有している人、しかも当時好きだった人。お互い涙出るほど笑った。さすがに「C」の話題は出さなかった。

 

純粋に「楽しかった」という感想を抱くイベントは滅多にない。本当に楽しかった。アラサーのおじさんの感想とは到底思えないが、心の底から楽しかったし幸せだった。

 

Aを駅まで見送った。Aはお土産をくれた。僕も家のそばのおいしいお菓子屋さんのクッキーをあげた。僕はプレゼントを選んで人にあげるのがものすごく苦手*5。これくらいしか思いつかなかった。Aのお土産は何というか僕の趣味を大変良く理解していて、嬉しかったのと同時に申し訳なく思った。

「絶対遊びに来てよ!案内するから!絶対ね!」

酔ったAは僕を指さして笑いながら改札を抜け、顔を傾けながら手を振った。僕も思いっきり手を振った。エスカレーターで上っていくAが見えなくなるまで見送った。見えなくなる寸前、Aが振り返って体をかがめながら手を振ってきた。車を見送ったあの日から約20年弱、Aの顔を見ながらちゃんと手を振ることができた。

 

あの日と違うのは、別れた後も僕が笑顔だったこと。それでも『車輪の唄』を聴いた。

 

約束だよ 必ず いつの日かまた会おう

 

あの日の僕に教えてあげたい。また会えるよ。

 

 

 

 

 

大切な思い出の一つを供養することができました。ありがとうございました。

 

youtu.be

バイバイ

 

*1:男子の間で不定期にこそこそと「好きな人アンケート」なるものが行われており、Aはいつもトップ5にいた

*2:「恋愛のABC」を知る年ではないので決してそういう意味ではない。おそらく「シーッ!」→「C」

*3:いやクッサ!!!

*4:バカみたいなお会計でもあった

*5:一緒に欲しい物買いに行きたい