通勤電車の彼らと髪を切った僕

今日は定時になった瞬間逃げるように職場を後にした。髪を切るために。

 

定時の1時間くらい前から部長が僕に話しかけたそうにこちらをチラチラ見ている*1ことに気づいた僕は、いろんなとこに意味もなく電話をかけまくって彼らのご機嫌取りをして時間を潰した。最近どうですか~、みたいな。普段なら絶対にやらないが、部長に捕まって帰るのが遅れるくらいならこのほうがマシだ。

 

定時アーマーを装備した僕は遠くから部長が送ってくる視線のビームをものともせずにナルト走りでオフィスを飛び出し、いつものお店へ向かった。11月は忙しすぎて切りに行けず2か月ぶりのカットだったので、量も長さもなかなかすごいことになっていた*2
美容師さんとはいつものように映画の話をした。『ブレット・トレイン』のブラピが被ってるバケットハットを俺たちが被ったら平日昼に公園で散歩してるジジイスタイルにしかならないよなという話で一番盛り上がった。

 

1月も行けるかわからないのでいつもより気持ち短めに切ってもらった。その帰り道、ふとこんなことを考えた。

僕は毎朝ほぼ同じ通勤電車の同じ車両の同じドアから乗車しているので、その瞬間目に入るのは知った顔ばかり。向こうにも僕のことを「○○駅から乗ってくるやつれた会社員」として認識している人がいるだろう。そんな彼らに明日「こいつ髪切ったのか」と思われるかもしれないと思うと、なんだかとても恥ずかしくなった。今までも毎月そういうシチュエーションはあったが、今回初めて恥ずかしくなった。

 

これって明らかに通勤電車の彼らを意識しているがゆえに生じる感情なのだが、通勤電車の特定の誰かに好意を抱いているわけではないのでおそらくこれはアレだ、髪を切った翌日に学校の教室に入る前のあの感情だ。小中学生の頃、絶対に髪を切ったことを指摘する声が飛んでくるので僕はいつもドキドキしながら教室のドアを開けていた。んで「あ、髪切ってる!!」とクソデカボイスで指摘されると恥ずかしそうに「うるせえ」と言いながら自分の席へと座るのだった。

 

通勤電車の彼らは今や教室で毎日一緒に過ごしていたやつらと同等の存在になったのだ。ここまでの仲間意識を持っている人はおそらくいない。僕は一方的に同志だと思っている。つらい朝を一緒に乗り越える仲間。FriendではなくComrade。

 

みなさん、僕は昨日髪を切りました。

 

 

*1:用件はたぶんアレのことだが、別に悪い話ではないので精神衛生上は問題ない。ただ間違いなく話がクソ長くなるので無視した

*2:昔から伸びるのが早く、そのせいであだ名が一時期「エロ」だったことがある